菩堤のとき(伊予)

伊予の国。
遍路道中において私が最も癒された場所。
そこに在る自然、そこに住む人々から頂いた暖かいぬくもりは
慣れに応じて忘れかけてしまいそうになるものを気づかせてくれるような
大きな真心だった。
私は伊予の国に来て、何度も真心のぎっしり詰まったお接待を受けた。
施し頂いたお接待は常に無条件であり、無償だった。
幸せを感じ、幸せについて想い馳せると同時に
アジアを旅していた頃を思い返し、大きな幸せ、小さな幸せ、
慣れの中で幸せのサイズを測っていた頃が自分にあったことを想い出して
恥ずかしくなった。
伊予の国でこれまでの人生にあった、たくさんの忘れ物をさり気なく
届けてもらった感じがした。
そしてそのことがやはり私にとっての幸せの一つだった。